Nigel Cabourn

◯ Nigel Cabourn - 40s US NAVY P-COAT - DARK NAVY

◯ Nigel Cabourn - 40s US NAVY P-COAT - DARK NAVY

英国沿岸警備隊が運用したビンテージをベースにしたモデル。 一見したところ、各所に貼られたレザーパーツがまず目を惹きます。 飾りのような印象ですがそうではありません。50年、100年という時の流れを生き抜いてきたヴィンテージミリタリーウェアにはデザインのためのデザインは一切存在しません。 エリと袖口はすり切れ防止です。 ウールは丈夫な素材ですが摩擦には比較的弱いという性質があります。摩擦によりウール短繊維が毛玉になってす抜けて行き、その分生地が薄くなるからです。一方でレザーは天然素材の中で格段に摩擦に強い性質があります。 ガーメントの中で最も摩擦に晒されるのは、まず袖口、そして襟です。よってこの部分にレザーが配されています。レザーパーツ自体も不通のものではありません。皮を革にするために、鞣し(なめし)という工程を行いますが、大きくは製油由来のケミカルなクロム塩を使用するクロム鞣しと、ナチュラルな植物由来のタンニンを使用するベジタブルタンニンなめしに大別されます。後者の方が前者には比較にならないほど多くのコストと時間、そして職人の経験と勘を要しますが、鞣された革の性質は大きく異なります。総じて言えばクロム鞣しは店頭にあったり、買ったばかりの状態が最も良く、着込むことで経年変化は生じますがその状態は経年劣化に近しい場合があります。これに対しベジタブルタンニン鞣しは着込めば着込むほど革の内部から油分が表に生じ、豊かな艶が生じます。さらに本製品に使用しているレザーは「芯通し」と言って革の中心部までタンニンを浸透させています。ベルトやバッグに用いる場合は強度を優先させ芯まで通しません。しかし本パーツはガーメントに寄り添うしなやかさを求めている事と、摩擦防止には充分すぎる強度をレザーがあらかじめ持つ事から芯通しを施しています。 バストの直下に設けられたポケットは物を入れるためではありません。体幹の中心の熱量の高さを利用してハンドウオーマーとしての機能するよう設計されています。垂直に切られたポケットは物を保持する事ができませんが両手のい出し入れがスムーズに出来ます。物を保持する目的がないのでボタンもフラップも持たず、負荷のかかる上下がレザーによって補強されています。対して腰位置のポケットは物を入れるために存在します。不用意に内容物が脱落しないようフラップが設けられ、こちらも左右の端はレザーに支えられています。 左右の身頃はダブルブレストによって深く重なり合う事で防風、防寒性を高めます。そして風向きによって打ち合わせを変える事ができ、風の侵入を防ぐ事ができます。これはPコートのディティールにおいて広く知られた事実ですが、さらにもう一歩踏み込めば、Pコートが運用される環境により密接な理由があります。 私たちにとって、寒い風とは北から吹いてくる北風です。南風は暖かい風です。なにを今更当たり前の事を、と思われるかもしれません。しかし注意が必要なのはこの事実はあくまでも「北半球に住む私たち」にとっての事実であるという事です。赤道を超えれば事実は真逆になります。南半休では南極から吹いてくる南風が冷たく、赤道で暖められた北からの風は暖かいのです。 そしてPコートは船上で運用されます。船舶はその任務に従って北半球と南半球を自在に移動します。商船であればその航路はある程度固定される場合が多いですが、戦闘用艦船の場合は文字通り北と南の半休を縦横無尽に航行する事が求められます。 袖口にはリブが仕込まれています。 言わずもがなですが袖口からの寒風の侵入をシャットアウトする目的があります。そのためにはしっかり手首を締め付ける必要がありますが、あまりに強すぎると血流を阻害してしまいます。寒さに晒されると手先や足先が一番に冷たくなりますが、これは末端に位置し熱の逃げやすい手足の血流をセーブし重要な器官の集中する体幹部の保温と保存を最優先させようとする人体の防衛本能でもあります。よって手首をさらに締め付けてしまうと俊敏な動作ができない危険性をはらみます。それはミリタリーウェアの着用者には命取りになる可能性があるので前述のハンドウオーマーが用意されているわけですが、同時にリブ自体にも最善の機能が付与されています。通常のリブは一定のテンションで編まれた細長い筒ですが、本製品のそれは手先側がきつめ、腕側が緩め、と異なるテンションで編み分けられています。さらに通常のリブには腕のラインと並行して縫い目がありますが本製品にはありません。本製品が丸編みでありなおかつ編み続けながら異なった編地に編み上げているためです。通常のリブに比べ手間、時間、コストを要しますが、極限まで着用者を守るにはどうすべきか、という思想が最優先されている好例と言えます。 この思想は戦場で着用者の命を守るミリタリーウェアと、極地において最高難度のミッションに挑む、探検隊、遠征隊に支給されるガーメントに最も強く反映されています。それ故にナイジェル・ケーボンの製品の根幹を成す要素となっています。 戦争に対し正常な嫌悪感を抱き戦争そのものは完全否定しつつ、ミリタリーウェアが持つこの思想に強く惹かれ現代の製品に昇華させるべく挑み続けるスタンスがそこにはあります。戦場に投入され使いやすい優れたディティールはより使いやすく、無駄なものは徹底的も排除され、究極の機能性の集大成たるデザインとして残ったもの。50年、100年という時の流れを超えて生き残った究極のデザイン。「可愛い」「かっこ良い」あるいは「トレンド」をはるか遠くに放り投げ、徹底して着用者の命を守るにはどうあるべきかを最優先においたスタンスという事です。 無論、デザイン重視、トレンド重視のガーメントを否定するという事では全くありません。ファッションとガーメントの持つ豊かな可能性と多様性に私たちは強く惹かれておりそこに価値を感じているからです。 だから沢山の行き方は当然あるべきです。 要はスタンスの問題なのです。 そう、だから私たちは此処に居ます。 そして私たちは夢想するのです。 私たちの生み出す製品がヴィンテージと同じく100年の時を超えて生き残ったら、と。 私たちにとってこんなに幸福なことはありません。


(SIZE)
46(S) (肩幅 42.5cm身幅 54.5cm 着丈 73.5cm 裄丈 62.5cm)
48(M) (肩幅 45cm身幅 56.5cm 着丈 76cm 裄丈 64cm)
50(L)(肩幅 46.5cm身幅 58.5cm 着丈 77.5cm 裄丈 64.5cm)
52(XL)(肩幅 48cm身幅 61.8cm 着丈 78.8cm 裄丈 65.5cm)
54(XXL)(肩幅 51cm身幅 62.8cm 着丈 81.4cm 裄丈 66.5cm)


(素材)
表地 毛90% ナイロン10% 皮革部分 牛革 リブ 毛80% ナイロン20%
裏地 身頃裏 コットン100% 袖裏 ポリエステル65% コットン35% 袋布 コットン100% 中わた ポリエステル100%


(生産国)
JAPAN


《Nigel Cabourn ナイジェル・ケーボン》

1949年イギリス生まれ。
17才でニューカッスル・アポン・タイン大学のファッション学科に入学。 ファッションキャリアのスタート地点に立つ。
カレッジの最後の年に自らの会社"CLRICKET CLOTHING LTD."を起ち上げる。
3年後にはパリで行われたメンズウェアショー"S.E.H.M"に出展。ハリス・ツイードを使ったコレクションを発表。
本格的に海外への展開を開始。
1996年ロンドンのコベント・ガーデンにNigel Cabourn一号店をオープン。
ナイジェル・ケーボンのコレクションは現在ふたつのラインで展開されている。
ひとつは日本で生産されている。"Main Line メイン・ライン"。もうひとつがイギリスのメーカーで可能な限りイギリス産の生地を使って生産する"Authentic Line オーセンティク・ライン"である。 どちらもナイジェル自身によるデザインとなっています。

*PC、モニター、ブラウザーの環境により実際の色やイメージと異なる場合がございます。ご了承下さい。
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